子どものように英語を学ぶ教材の嘘と本当
「子どもは聞くことで英語を身につけた」
この言葉をなぞるかのように作られた英会話教材が多数ありますが、この手の教材は注意が必要です。
まず、このキャッチコピーを掲げることで理論的にしっかりしていそうだと思わせることができるようになります。
だからこそ、この言葉を都合良く利用しているような教材もありました。
私の体験談としては、この手の教材はスピーキングに対して効果があるものとないものが真っ二つに分かれます。
「子どもは聞くことで英語を覚えたから聞くことだけでOKです」という英会話教材はあまり効果が期待できないと思った方がいいでしょう。
逆に、「子どもは聞くことで英語を覚えたからまずは聞くことから始めましょう、そして話す練習をしましょう」、このタイプの教材は効果が高いです。
たしかに子どものころ、聞くことで言葉を覚えたのは事実です。
ですが、いきなりスラスラと文章として言葉を話したわけではありません。
まずは「ママ」「パパ」などの単語から話しはじめたはずです。
そして、親に褒められ、新しい単語を教えてもらい、間違ったらそれを直されて・・・ということを繰り返し行なってきたわけです。
このプロセスを見落としてはいけないのですが、子どもは聞くことと同時に話すこともしています。
話す中で親に間違いを指摘され、それを修正するということを何度も繰り返しています。
決して、聞くだけではありません。
聞くことと同時に、話すことをしています。
そして、生まれてから相当な時間がかかってやっと文章・会話として成り立つ言葉を話せるようになるものです。
子どもは決して聞くだけで言葉を話せるようになったわけではありません。
飛び級のようにいきなり文章で言葉を話し出すこともありません。
私は聞くだけで英語が話せるようになることは極めて難しいと思っていますし、ただ聞くだけで英語を覚えようとすれば膨大な時間がかかってしまうことでしょう。
1日の大半を日本語の環境で過ごす大人にとっては、自分の命があるうちに英語が話せるようになるのか、それとも先に人生を終えてしまうのかという感じです。
聞くだけで英語が話せるようにならない理由をさらに言えば、私たちはもう子どもではありません。
すでに日本語という第一言語を身につけている大人なわけです。
これが子どもとの最大の違いです。
子どもが母国語を覚えるとき、まずは親が話す言葉を聞きます。
そして、その言葉を理解しようとするのですが、まだ1つも言語を身につけていないがゆえに、理解するために置き換える言葉がありません。
ですので、聞いた言葉を目の前の様子と結び付けて脳が映像として理解しようとするのです。
しかし、これが大人になれば話が変わってきます。
CDで英語の音を聞きます。
そうすると、すでに日本語という言葉を身につけているので、無意識にも聞いたものを日本語を介して理解してしまう、日本語を介して理解しようとしてしまうものです。
これはそうしようと思っていなくても無意識にしてしまうものです。
そのため、聞いた英語をそっくりそのまま脳が理解するということができません。
子どもが1つ目の言葉を覚えるのと、1つ目の言葉を身につけている大人が2つ目の言葉を覚えるプロセスは大きく異なります。
大人は聞いた言葉を子どもと同じように理解することは絶対に不可能です。
これには他にもさまざまな理由があります。
代表的な理由として、語順と音の違いについては誰もが指摘することです。
大人はすでに日本語の語順が頭の中でできあがっているため、それが邪魔をして素直に聞いたものを理解することができません。
さらにはすでに日本語の音が頭の中にできあがっているわけです。
日本語と英語では音が違うので、いくら英語を聞いてもすでに日本語の音のチューニングが頭にできてしまっている大人は子どものように音を把握することができません。
頭の中がまっさらで言葉に対する先入観がない子どもと、頭の中が日本語でいっぱいですでに日本語の脳ができあがっている大人とでは同じ学習をしても得られる効果がまったく違います。
結論を言えば、子どもは聞くことで英語を覚えたということに対する前提条件が違うわけです。
私たちはもう子どもではありません。
聞くことから英語の学習を始めることはいいと思いますが、大人であればそれよりも大切なことは実際に英語を話す練習です。
子どものように時間的余裕もなければ、脳の状態も違うし、親の指導もないわけですし、自然と言葉を身につけることはできません。
大人には大人の勉強法があります。
聞くことから抜け出して英語を話す、話す中で英語が話せるようになる、これが大人がするべき英語の勉強法です。
子どものように英語を学ぶという理論を唱えている教材にも2つのタイプがあることを知っておいてください。
聞くことしかできない教材と、聞くことにはじまり話す練習をする教材。
聞くことはリスニングであり、スピーキングの練習なしで英語が話せるようになると言ってしまうのは言い過ぎでしょう。
これが私の思う「子どものように英語を学ぶ教材」の実態です。
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